チュートリアル/ 2つの並列ダム¶
ケース1: 基本¶
並列につながった2つダムを考えます。
使用するサンプルプロジェクト | ||
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サンプルプロジェクト | sampleProject_dam2parallel.zip | 30KB |
操作手順 | sampleProject_dam2parallel.pdf | 1093KB |
- 2つのダムの容量、初期貯水量、全流入量を合計した値は、1つのダムのケース と同じとします。
- それぞれのダムの容量、初期貯水量、全流入量は、お互いに同じとします。
この設定ならば、観測所3 における流量は、1つのダムのケースと同じになるはずです。
DioVISTA は、どのような答えを出すのでしょうか。
DioVISTA Dams の操作方法
- ZIPファイルをダウンロードし、展開します。
dam2parallel.zip - DioVISTA Damsを起動します。
- プロジェクトファイル dam2parallel.ddzproj を開きます(メニュー > [ファイル] > [プロジェクトを開く])。
- "モデル" タブに移動します。
- "最適化" ボタンを押します。
- ダイアログが出現します。[ケース名]を入力します (Case1)。[OK]ボタンを押します。
- 数秒で最適化が完了します(画面下のダイアログに "Process terminated with exit code 0" と表示されます)。
- 最適化が完了したら、 "結果表示" ボタンを押します。
DioVISTA は、次のような答えを出しました。
- 初期にダムに貯まっていた水は、すべて放流しました。
- 最終段階で、ダムは満杯になりました。
- 2つのダムのピーク流入量の合計値は 1500 m³/s でした。
- 観測所3 のピーク流量は 208 m³/s でした。この値は、1つのダムのケース と同じでした。
予想した通り、観測所3 のピーク流量は、1つのダムのケース と同じ結果になりました。
下の図は、データをCSV出力して作成したグラフです。
ケース2: 初期貯水量の違い¶
では、初期貯水量を、2つのダムで変えてみましょう。
表: 初期貯水量(MCM)
ダム1 | ダム2 | |
---|---|---|
ケース1 | 5 | 5 |
ケース2 | 8 | 2 |
上述のケース1では、ダム1、ダム2の初期貯水量はどちらも 5 でした。
このケースでは、ダム1、ダム2の初期貯水量をそれぞれ 8, 2 にしました。
ただし、2つのダムで合計した初期貯水量は 10 であり、ケース1と同じです。
これは、果たしてどのような結果をもたらすでしょうか。
従来の「本則操作」であれば、初期貯水量を増やすことは洪水調整に不利に働き、観測所3 の流量が増えてしまいます。
DioVISTA Dams の操作方法
- [モデル] タブにあるモデル画面で[ダム1]を選択します。
- [初期貯水量] を変更します。
- 同様に [ダム2] の初期貯水量を変更します。
- 最適化を実行します。
得られた結果を示します。
観測所3 のピーク流量は 208 m³/s で、ケース1と同じになりました。
下の動画は、ダム1の初期貯水量を0から10に1ずつ変化させた場合の結果です。
ダム1は、初期の貯水率(上段のグラフの青線の左端)が0から1に増えていきます。
逆にダム2は、初期の貯水率(中段のグラフの青線の左端)が1から0に減っていきます。
一方、観測所3の流量(下段のグラフの赤線)は変化しません。
ダム群全体の貯水量が同じなら、それぞれのダムの貯水率を変えても、観測所3 の流量を最小に抑えることができました。
ケース3: ピーク流入量の違い¶
では、ピーク流入量を2つのダムで変えてみましょう。
表: ピーク流入量(m³/s)
ダム1 | ダム2 | |
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ケース1 | 750 | 750 |
ケース3-1 | 900 | 600 |
基本パターンでは、ダム1、ダム2とも流入量のピークは 750 でした。
このケースでは、ダム1の流入量を1.2倍の 900 に, ダム2の流入量を0.8倍の 750 にしました。
ただし、2つのダムで合計した流入量は変えません。
これは、果たしてどのような結果をもたらすでしょうか。
従来の「本則操作」であれば、流入量が増加すれば、観測所3 の流量が増加します。
DioVISTA Dams の操作方法
- プロジェクトのプロパティを表示するため、モデル画面で白い部分をクリックします。
- 降雨イベントを "case3-1" に変更します。
- 最適化を実行します。
得られた結果を示します。
観測所3 のピーク流量は 208 m³/s で、ケース1と同じになりました。
グラフを見ると、ダム1の放流量(上段のグラフの黄色線)が二段になっています。グラフ左側が事前放流、グラフ右側が洪水調整です。
一方、ダム2の放流量(中段のグラフの緑線)はなべ底型になっています。ダム2は、事前放流をしますが、ダム1の洪水調整が始まるタイミングに合わせて放流量を減らします。また、洪水後期では、ダム1の流入量が減るタイミングに合わせて、ダム2の放流量を増やしています。
観測所3の流量 (下段のグラフの赤線)はほとんどの時間で流量が一定になっています。ダム1とダム2を連携操作することで、観測所3の流量を増加させずにすみました。
では、もっと大きい流量を与えた場合はどうでしょうか。
表: ピーク流入量(m³/s)
ダム1 | ダム2 | |
---|---|---|
ケース1 | 750 | 750 |
ケース3-2 | 1050 | 450 |
このケースでは、ダム1の流入量を1.4倍の 1050 に, ダム2の流入量を0.6倍の 450 にしました。
DioVISTA Dams の操作方法
- プロジェクトのプロパティを表示するため、モデル画面で白い部分をクリックします。
- 降雨イベントを "case3-2" に変更します。
- 最適化を実行します。
得られた結果を示します。
観測所3 のピーク流量は 242 m³/s で、先ほどの結果(208 m³/s)よりも大きい値になりました。
ダム2 の放流量(中段のグラフの緑線)の、なべ底型のグラフに着目してください。なべ底の部分で、放流量が0になっています。ダム1の放流量に合わせてもっと放流量を減らしたいのですが、放流量はマイナスの値をとることができません。そのため、観測所3 の流量が増加してしまいました。
下の動画は、ダム1の流入量を0.5倍から1.5倍に0.1ずつ変化させた場合の結果です。
ダム1は、流入量(上段のグラフの灰色線)のピークが大きくなっていきます。
逆にダム2は、流入量(中段のグラフの灰色線)のピークが小さくなっていきます。
観測所3 (下段のグラフの赤線)は、0.8倍から1.2倍の間は一定値(208 m³/s)ですが、その範囲を超えると徐々に大きくなります。
ダム群全体の流入量が同じで、それぞれのダムの流入量が一定の範囲に収まるなら、観測所3の流量を増加させずにすみました。
これは、2つの直列ダムの結果とは異なります(並列ダムのほうが、直列ダムよりも洪水調整能力が高いか・低いか、結果を見る前に考えてみてください)。
ケース4: 流入量のタイミングの違い¶
では、流入量のタイミングを2つのダムで変えてみましょう。
表: ピーク時刻(h)
ダム1 | ダム2 | |
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ケース1 | 18 | 18 |
ケース4 | 18 | 21 |
基本パターンでは、ダム1、ダム2とも流入量のピーク時刻は開始から18時間後 でした。
このケースでは、ダム2の流入量のピークを3時間後ろに移動させました。
これは、果たしてどのような結果をもたらすでしょうか。
従来の「本則操作」であれば、流入量のピークがずれれば、観測所3 の流量は減少します。
DioVISTA Dams の操作方法
- プロジェクトのプロパティを表示するため、モデル画面で白い部分をクリックします。
- 降雨イベントを "case4" に変更します。
- 最適化を実行します。
得られた結果を示します。
観測所3 のピーク流量は 188 m³/s で、基本パターンの結果(208 m³/s)よりも小さい値になりました。
これは、ピークがずれること、そしてダム2の事前放流にかけられる時間が増えるためです。
ただし、ダム2の放流量の巧みな操作にも注目してください(中段グラフの緑線)。
洪水後期になりダム1の流入量が減っていくと、その減った分だけ、ダム2の放流量を増やしています。
このようにして、観測所3 の流量が増えないようにしつつ、ダム2を最大限活用しています。
下の動画は、ダム2の流入量ピークを、基本パターンの-3時間から+3時間まで1時間ずつ変化させた場合の結果です。
流入量ピークが後ろになるほど、観測所3 のピーク流量が減っていきます。
また、一方のダムの流入量が洪水後期に減り始めると、ピークを遅く迎えるもう一方のダムの放流量を増やしています。
今回の設定では、流入量のピークが後ろにずれるほど、観測所3 の流量を抑えることができました。