チュートリアル/ 2つの直列ダム¶
ケース1: 基本¶
直列につながった2つダムを考えます。
使用するサンプルプロジェクト | ||
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サンプルプロジェクト | sampleProject_dam2serial.zip | 30KB |
操作手順 | sampleProject_dam2serial.pdf | 2472KB |
- 2つのダムの容量、初期貯水量、全流入量を合計した値は、1つのダムのケース と同じとします。
- それぞれのダムの容量、初期貯水量、全流入量は、お互いに同じとします。
この設定ならば、観測所2 における流量は、1つのダムのケースと同じになるはずです。
DioVISTA は、どのような答えを出すのでしょうか。
DioVISTA Dams の操作方法
- ZIPファイルをダウンロードし、展開します。
dam2serial.zip - DioVISTA Damsを起動します。
- プロジェクトファイル dam2serial.ddzproj を開きます(メニュー > [ファイル] > [プロジェクトを開く])。
- "モデル" タブに移動します。
- "最適化" ボタンを押します。
- ダイアログが出現します。[ケース名]を入力します (Case1)。[OK]ボタンを押します。
- 数秒で最適化が完了します(画面下のダイアログに "Process terminated with exit code 0" と表示されます)。
- 最適化が完了したら、 "結果表示" ボタンを押します。
DioVISTA は、次のような答えを出しました。
- 初期にダムに貯まっていた水は、すべて放流しました。
- 最終段階で、ダムは満杯になりました。
- 2つのダムのピーク流入量の合計値は 1500 m³/s でした。
- 観測所2 のピーク流量は 208 m³/s でした。この値は、1つのダムのケース と同じでした。
予想した通り、観測所2 のピーク流量は、1つのダムのケース と同じ結果になりました。
下の図は、データをCSV出力して作成したグラフです。
ケース2: 初期貯水量の違い¶
では、初期貯水量を、2つのダムで変えてみましょう。
直列のダムには、ダム1(上ダム)とダム2(下ダム)があります。
同じ初期貯水量であっても、上ダムの初期貯水量が多い場合と、下ダムの初期貯水量が多い場合とでは洪水調整の仕方が違います。
はたして、どちらが洪水調整に有利なのでしょうか。
表: 初期貯水量(MCM)
ダム1 | ダム2 | |
---|---|---|
ケース1 | 5 | 5 |
ケース2 | 8 | 2 |
上述のケース1では、ダム1、ダム2の初期貯水量はどちらも 5 でした。
このケースでは、ダム1、ダム2の初期貯水量をそれぞれ 8, 2 にしました。
ただし、2つのダムで合計した初期貯水量は 10 であり、ケース1と同じです。
これは、果たしてどのような結果をもたらすでしょうか。
従来の「本則操作」であれば、上ダムの初期貯水量を増やすことは洪水調整に不利に働き、観測所2 の流量が増えてしまいます。
DioVISTA Dams の操作方法
- [モデル] タブにあるモデル画面で[ダム1]を選択します。
- [初期貯水量] を変更します。
- 同様に [ダム2] の初期貯水量を変更します。
- 最適化を実行します。
得られた結果を示します。
観測所2 のピーク流量は 209 m³/s で、ケース1とほぼ同じになりました。
なぜ、ケース1とほぼ同じ結果になったのでしょうか。
初期貯水量を様々に変えて、グラフを動画にしてみます。
下の動画は、ダム1の初期貯水量を0から10に1ずつ変化させた場合の結果です。
ダム1は、初期の貯水率(上段のグラフの青線の左端)が0から1に増えていきます。
逆にダム2は、初期の貯水率(中段のグラフの青線の左端)が1から0に減っていきます。
一方、観測所2の流量(下段のグラフの緑線)は変化しません。
これは、ダム1の放流量を巧みに制御することにより実現しています。
ダム群全体の貯水量が同じなら、それぞれのダムの貯水率を変えても、観測所2 の流量を最小に抑えることができることが示されました。
ケース3: ピーク流入量の違い¶
では、ピーク流入量を2つのダムで変えてみましょう。
表: ピーク流入量(m³/s)
ダム1 | ダム2 | |
---|---|---|
ケース1 | 750 | 750 |
ケース3-1 | 900 | 600 |
基本パターンでは、ダム1、ダム2とも流入量のピークは 750 でした。
このケースでは、ダム1の流入量を1.2倍の 900 に, ダム2の流入量を0.8倍の 750 にしました。
ただし、2つのダムで合計した流入量は変えません。
これは、果たしてどのような結果をもたらすでしょうか。
従来の「本則操作」であれば、流入量が増加すれば、観測所2 の流量が増加します。
DioVISTA Dams の操作方法
- プロジェクトのプロパティを表示するため、モデル画面で白い部分をクリックします。
- 降雨イベントを "case3-1" に変更します。
- 最適化を実行します。
得られた結果を示します。
観測所2 のピーク流量は 208 m³/s で、ケース1と同じになりました。
グラフを見ると、ダム1の放流量(上段のグラフの黄色線)が二段になっています。グラフ左側が事前放流、グラフ右側が洪水調整です。
一方、ダム2の放流量(中段のグラフの緑線)は一段になっています。この値は、観測所2の流量 (下段のグラフの緑線)と同じです。ダム2の流量を一定かつ最小に保つことができるようになっています。
ダム2の放流量グラフをこのようにするためには、ダム2の上流域に降った雨を勘案しながら、ダム1の放流量を巧みに調整する必要があります。
一見、ダム1, ダム2の放流量グラフは単純な形をしていますが、実は巧みな操作の結果なのです。
下の動画は、ダム1の流入量を0.5倍から1.5倍に0.1ずつ変化させた場合の結果です。
ダム1の流入量(上段のグラフの灰色線)は、ピークが大きくなっていきます。
ダム2の流入量(中段のグラフの灰色線)は、自ダムへの降雨による流入量と、ダム1の放流量との合計になります。
観測所2 (下段のグラフの緑線)は、0.5倍から0.7倍の間は徐々に減っていきますが、0.8倍から1.5倍の間は一定値(208 m³/s)になりました。
ダム群全体の流入量が同じで、ダム2(下ダム)の流入量が一定の範囲に収まるなら、観測所2の流量を増加させずにすみました。
これは、2つの並列ダムの結果とは異なります。直列ダムの上ダムに大流量が入る場合、並列ダムの一方に大流量が入る場合よりも、ダム群全体の洪水調整能力が高いです。逆に、直列ダムの下ダムに大流量が入る場合は、並列ダムの一方に大流量が入る場合と同程度の洪水調整能力になりました。
ケース4: 流入量のタイミングの違い¶
では、流入量のタイミングを2つのダムで変えてみましょう。
表: ピーク時刻(h)
ダム1 | ダム2 | |
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ケース1 | 18 | 18 |
ケース4 | 18 | 21 |
基本パターンでは、ダム1、ダム2とも流入量のピーク時刻は開始から18時間後 でした。
このケースでは、ダム2の流入量のピークを3時間後ろに移動させました。
これは、果たしてどのような結果をもたらすでしょうか。
従来の「本則操作」であれば、流入量のピークがずれれば、観測所2 の流量は減少します。
DioVISTA Dams の操作方法
- プロジェクトのプロパティを表示するため、モデル画面で白い部分をクリックします。
- 降雨イベントを "case4" に変更します。
- 最適化を実行します。
得られた結果を示します。
観測所2 のピーク流量は 188 m³/s で、基本パターンの結果(208 m³/s)よりも小さい値になりました。
これは、ピークがずれること、そしてダム2の事前放流にかけられる時間が増えるためです。
ただし、ダム2の放流量の巧みな操作にも注目してください(中段グラフの緑線)。
洪水後期になりダム1の流入量が減っていくと、その減った分だけ、ダム2の放流量を増やしています。
このようにして、観測所2 の流量が増えないようにしつつ、ダム2を最大限活用しています。
下の動画は、ダム2の流入量ピークを、基本パターンの-3時間から+3時間まで1時間ずつ変化させた場合の結果です。
流入量ピークが後ろになるほど、観測所2 のピーク流量が減っていきます。
また、一方のダムの流入量が洪水後期に減り始めると、ピークを遅く迎えるもう一方のダムの放流量を増やしています。
今回の設定では、流入量のピークが後ろにずれるほど、観測所2 の流量を抑えることができました。